【FP監修】学資保険とは?子ども一人1000万円かかる教育費!学資保険のメリット・デメリット
お子さんの誕生を控えて、気になるのは将来の教育費。「学資保険を……」と思い浮かんだものの、子どもが生まれた後は忙しくて考える暇がなく、またミルク代やおむつ代ほか、いろいろなことにお金がかかるため、極力新規の出費は抑えたいと躊躇しているうちに月日が経ってしまったという人は少なくないかと思います。
祖父母や両親ほか、上の世代には奨められるけど。日銀の異次元緩和による低金利が続き、以前ほどの高い返戻率が望めなくなったといわれる「学資保険」。
それでも、加入した方がいいのでしょうか?学資保険の特徴を知り、保険商品としての検討ポイントを考えながら、そのメリットとデメリットを比較していきます。
学資保険のはじまり
1950年代まで40%台だった高等学校等への進学率は、高度経済成長期を経て1974年に90%を超えるようになります。1976年以降は多少の低下・停滞はあるものの、大学進学率が1950年代の10%未満から30%弱までに上昇したのもこの頃です。
第一次ベビーブーム世代が結婚、出産期を迎えて子どもの数が増加。好景気を受けて、今後子どもの教育にお金がかかる、かける時代が来るであろうことを予見して、1971年に郵便局により日本で初めての「学資保険」が創設されました。
将来の教育資金を確保するという目的の分かりやすさと、子どものためにできる限りのことをしてあげたいという親心をつかんだ学資保険は、多くの人に支持されて加入者を増やしました。以降、民間の保険会社もぞくぞくと参入し、現在のように多種多様な商品が誕生していきます。
学資保険とは、どんな保険?
子どもが学問を修業するためにかかる資金を貯めることを主目的とした保険商品を「学資保険」(または「子ども保険」)と呼びます。
つまり、教育資金を貯めていける、貯蓄性を兼ね備えた保険です。
あまりピンとこなかもしれませんが、保険業法では、第一分野・生命保険の中の生存保険に分類されています。
生存保険とは、被保険者が保険期間満了後に生存していた場合に保険金等が支払われる商品を指します。学資保険では、多くの人が満期をお子さんの中学校卒業、高校卒業の時期に設定して保険金等を受け取り、進学のための準備金として充てています。
生存保険ではほとんどの場合、保険期間中に被保険者が死亡した場合は保険金等が支払われないのに対して、一般的に払い込んだ保険料相当分の死亡保険金が受取人に支払われるのが学資保険の特徴です。
高まる進学率と高騰する教育費
2022年12月21日に公表された文部科学省の『令和4年度学校基本調査(確定値)』によると、2022年度の高等学校等卒業者の大学や短期大学、専門学校などの高等教育機関への進学率(高等専門学校4年在学者を含む)は前年度と同率の83.8%で過去最高。いまでは多くの家庭で小学校入学以降、長期に渡って教育費がかかるのが当たり前の時代です。
バブル景気の崩壊の後、日本経済は「デフレの30年」といわれる時代を経験します。長い間、不動産から食品まで、あらゆるものの価格が下がりました。ところが、それに反して教育費だけは年々上昇し続けていったのです。
文部科学省の『令和3年度子供の学習費調査』を見ると、幼稚園から高校まで、すべて公立に通ったとして、子ども一人当たりにかかる教育費(給食費や学外活動費含む)は合計で1,000万円以上になることが分かります。
いずれかで私立に通えば、それ以上に。さらに高等教育機関への進学が当たり前になりつつある現在では、どの程度の教育資金を準備しておく必要があるのでしょうか。
一人当たりの年間学習費総額(全国平均値)
区分 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
幼稚園 | 165,126円 | 308,909円 |
小学校 | 352,566円 | 1,666,949円 |
中学校 | 538,799円 | 1,436,353円 |
高等学校(全日制) | 512,971円 | 1,054,444円 |
同じく、文部科学省の資料によると、いずれの高等教育機関も初年度は入学料と授業料だけで高額の費用が必要になることが分かります。これに施設設備費が加われば、いずれの学校に進学しても初年度だけで100万円以上のお金が必要になると考えられます。
そして、4年間。2005年から据え置かれているとはいえ、国公立大学でも昔のように十数万円の授業料とはいかず。さらに、私立大学に至っては8年連続して学費は上昇している(令和3年度実績)のが実情です。
授業料 | 入学料 | 合計 | |
---|---|---|---|
国立大学 | 535,800円 | 282,000円 | 817,800円 |
公立大学 | 536,363円 | 391,305円 | 927,668円 |
私立大学 | 930,943円 | 245,951円 | 1,176,894円 |
私立短期大学 | 723,368円 | 237,615円 | 960,983円 |
私立高等専門学校 | 627,065円 | 246,753円 | 873,818円 |
専修学校 専門課程 (昼間部) |
695,000円 | 183,000円 | 878,000円 |
家庭に重くのしかかる、日本の教育資金
経済協力開発機構(OECD)が2022年10月3日に発表した『Education at a Glance 2022』によると、2019年時点での日本の一般政府総支出に占める初等教育から高等教育までへの公財政支出の割合は、7.8%とOECD平均10.6%を下回り、対GDP比でも3.0%とOECD平均4.4%を下回っています。
近年は改善傾向にあるとはいえ、依然として低い水準です。高等教育を受ける学生の私費負担も67%と、OECD平均の31%を大きく上回っています。
日本では未だに、進学するなら各家庭が責任を持って資金を準備するべきという考え方が一般的。ところが、先述のように学費が上昇し続けているにもかかわらず、何年も賃金が上がらないため、近年は、学生自身がアルバイトで学費や生活費を稼いだり、奨学金を借りたりしてなんとかやりくりをしているという家庭が多くあります。
超低金利時代にもある学資保険のメリットとは?
長引く低金利に、学資保険の返戻率も低下しています。そのため、必要性を感じない。また、自主的に貯金するのでも変わらないのではないかと思う人もいることでしょう。
たしかに、確実に貯金ができ、しかもお子さんが高校や大学の進学を迎えるまで、引き出すことなく貯め続けられる人はそれでもいいのかもしれません。
ただ、私立大学4年間の学費を準備しようと考えた場合、生まれた年からすぐに始めても、18歳で入学するまでの間に毎月2万円以上のお金を貯金していく必要があります。何かと不安定な状況が続くいま、「絶対に大丈夫」と言い切れるでしょうか。
強制的に毎月積み立てていくことは学資保険のメリットといえるのではないでしょうか。
途中解約ができないわけではありませんが、時期によっては大きくマイナスになることもあるため、学資保険加入者からは、「いま解約したら損かなと考えて、満期まで積み立てていけた」という話も聞きます。
そして、これが貯金との一番大きな違いですが、貯金の場合は、預金者が亡くなった場合、そこからお金が増えていくことはありません。
ところが、学資保険の場合は、契約者が亡くなると「払込免除特約」というものが適応され、以降の保険料の支払いが免除されても満期には契約通りの保険金を受け取ることができるのです。
子どもの教育にお金がかかるのは当然のことですが。それにまつわるさまざまな不測の事態には、やはり備えておきたいもの。そう考えたとき、学資保険を選択肢の一つになりうるのではと思います。
次回は、学資保険を選ぶ際のポイントを紹介します。さまざまな点から、ご自身なりの重視するべき項目などを考えて、ご家庭の状況にあった学資保険選びの参考にしてください。
- カテゴリー
- 学資保険